血液疾患


 妊婦さんは生理的に水血症の状態で妊娠中期に最もヘモグロビン(Hb)が低下するので妊娠前期および後期はHb<11g/dl、妊娠中期はHb<10.5g/dl を貧血と定義します。妊娠中期にHb>13.2の場合は血液濃縮傾向のため児に悪影響を与えます。

A.鉄欠乏性貧血:出血以外に妊娠中に起こる貧血のほとんどが鉄欠乏性貧血です。体内の貯蔵鉄分の不足により起こります。妊婦さんの鉄不足は胎児には影響しません。

#治療:治療は鉄剤の内服か注射です。米国では3カ月間の補充を勧めていますが、定義通りに治療を行うとほとんどの日本人妊婦に鉄剤投与が必要になります。最近ようやく欧米でも妊婦に対するルチーンの鉄剤投与に疑問がもたれるようになってきました。

#妊娠中の診断の注意点:妊娠中はHb<9でも小球性、低色素性の変化を示さないことが多い。総鉄結合能は正常妊娠でも増加する。血清フェリチンは妊娠により低下する。

B.特発性血小板減少性紫斑病 ITP:妊娠合併の血液疾患として貧血に次いで多いものです。診断基準では血小板数10万/μl を血小板減少と呼びますが、血小板数5万以下で出血傾向が現れ2万以下になると生命が危険になります。

#この病気の方の血液中には抗血小板抗体という自己に対する抗体があります。抗血小板抗体は胎児に移行するため、児に血小板減少症がおこり頭蓋内出血をきたす危険があります。ITP合併妊娠では出生前に臍帯血穿刺を行って児の血小板数を確認すべきであるという意見と、実際に頭蓋内出血を起こす例は非常に少ないので臍帯血穿刺や予防的帝王切開は必要ないという意見があります。

#母体の分娩時出血量を増やさないためには経腟分娩がよく、血小板数が5万以上あれば帝王切開を行っても通常問題ありません。

#治療:副腎皮質ステロイド内服。重症例に対し免疫グロブリン大量療法や血小板輸血、摘脾。

 


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