子宮内膜症の診断
 主に子宮内膜症の診断法に限定して説明します。子宮内膜症については「病気の説明」の子宮内膜症の項もご覧下さい。
 
1. はじめに
 子宮内膜症と言われている人の多くは、症状、内診、画像診断によって診断されています。医学的にはこうして診断される子宮内膜症のことを厳密には「臨床的子宮内膜症」といいます。診断を確定するためには、腹腔鏡検査や開腹によって肉眼的に確認し、さらに厳密には組織をとって病理検査を行う必要があります。ただし、詳しい腹腔鏡検査が必要かどうかは個々の症状に合わせて判断しますので、治療上不要と考えられれば省略することもできます。
 
2. 子宮内膜症の症状
 簡単にいうと下腹痛と不妊が主な症状です。
 子宮内膜症の方の88%に月経痛があり、そのうち70%は鎮痛剤を必要とし、18%は鎮痛剤が効かない程の月経痛です。鎮痛剤が効かないくらい強い月経痛がある場合は子宮内膜症の可能性が高いといえます。また、月経時以外にも下腹部痛、腰痛、性交時痛、排便痛などがある場合は子宮内膜症を疑う必要があります。
 下腹痛がなくても不妊症の人のおなかの中を腹腔鏡で調べると30〜60%の方に子宮内膜症がみつかります。下腹痛がなくても進行期に分類される人が30%位いますので、症状から子宮内膜症の重症度を推定することは困難であるといえます。
 
3. 内診所見
 最も多い所見は内診時の圧痛(押して痛みがあること)と卵巣の腫大です。子宮の動きが悪い場合、子宮が後屈している場合、子宮の裏側にしこりがある場合にも子宮内膜症が疑われます。先に述べましたように、かなり進行していても内診上異常がまったくないことが30%もあることに注意が必要です。
 
4. 超音波検査
 卵巣の表面やおなかの中の腹膜という壁の表面にできた初期の子宮内膜症は超音波検査ではわかりません。超音波検査でわかるのは、卵巣チョコレート嚢胞と子宮腺筋症です。子宮内膜症が卵巣の中にできてチョコレートのようなドロドロの血液がたまったものを卵巣チョコレート嚢胞といいます。子宮の筋肉の中に子宮内膜症ができて子宮の壁が厚くなった状態が子宮腺筋症です。
 
5. CA125
  血液検査をしてCA125という腫瘍マーカーの値を測定します。 CA125というのは卵巣ガンの時に高くなる腫瘍マーカーですが、子宮内膜症をはじめとして良性の病気でも高くなることがあるので診断の参考にします。子宮内膜症の約半数でCA125が正常を越えた値になります。ただし、子宮内膜症がない人でも25%位の人はCA125が高くなるのであくまでも補助診断です。 また、CA125が正常でも子宮内膜症がないとはいえません。既に腹腔鏡などで子宮内膜症と診断されたCA125が高値の方の場合は治療経過をみるための目安になります。
 
6. CT、MRI
 子宮内膜症の診断にはCTよりもMRIの方が役に立ちます。特に卵巣チョコレート嚢胞の診断には威力があります。子宮腺筋症の補助診断にもなります。
 
7. 腹腔鏡検査
 いわゆる「臨床的子宮内膜症」と診断されても、腹腔鏡検査をしておなかの中を観察すると実際には子宮内膜症の病変部位がみつからないことが20%もあります。逆に不妊症の原因を究明するために腹腔鏡検査をすると、痛み症状や内診、画像診断などの異常がなくても子宮内膜症がみつかることがよくあります。検査をして子宮内膜症がみつかった場合はその場で病変部位を焼いたり、癒着を剥がしたりすることもできます。
 説明がわかりにくくなるかも知れませんが、腹腔鏡検査は診断という意味で価値のある検査です。初期の子宮内膜症がみつかったからといって必ずしも全ての人に治療が必要なわけではありません。現在のところ初期の腹膜病変を電気メスなどで焼くと妊娠率が高くなるという意見が主流ですが、あまり変わりはないという論文データもあります。不妊症の検査をして子宮内膜症がみつかったので薬物治療をしているという方は多いと思いますが、最新の見解では、不妊症の治療目的に子宮内膜症の薬物療法を行う意義はほとんどないと言われています。つまり、不妊治療中に初期にしろ進行期にしろ子宮内膜症がみつかっても、薬物治療や手術を行わずに待機するという方針もある、あるいはその方がよいこともあるということです。子宮内膜症合併不妊症の治療方針に関してはまだ全国的に統一されていないというのが実情ですので、治療に当たっては十分に主治医の説明を受けるべきでしょう。
 
最後に
 今回は子宮内膜症の診断法にほぼ限定して説明しました。子宮内膜症という病気は非常に有名になりすぎたために過剰診断、過剰診療がなされることもあるようです。逆に症状がない場合には過少に評価されることもあり、診断と治療に関してはかなり注意が必要です。治療法に関してはさらに複雑な問題もありますので、別の機会に特集でご紹介する予定です。

 


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