ピル
望まない妊娠をしないように、避妊の知識を身につけて確実に避妊しましょう。
各種避妊法と失敗率
 現在最も確実な避妊法はピルをのむことです。100人の女性がピルをのんで避妊したとして、1年間に妊娠する率は0.1%です。不妊手術をしても0.5%位の妊娠率があります。子宮内避妊器具による妊娠率は0.1〜1.5%位です。これら、ピル、不妊手術、子宮内避妊器具の3者は避妊効果の高い方法です。確実な避妊法を選ぶ場合はこれら3者の中から選ぶことになります。
 日本女性の避妊法の主流はコンドームです。若い方は膣外射精でも十分な避妊効果があると考えている人が多いようです。コンドームを正しく、理想的に使ったとしても100人の女性が1年間に妊娠する率は3%位あるといわれています。理想的なコンドームの使用とは、セックスするときは必ず最初から最後までコンドームをつけるということです。今日は安全日だからといってコンドームをつけないのは理想的な避妊法とは言えません。一般的には途中からつけたり、今日は絶対安全だろうということでつけないことがあると思います。そうした普通の使い方の場合、1年間の妊娠率は10〜15%位になるでしょう。排卵日を予想して危険日にはセックスをしないという方法だと、25%位の妊娠率があります。若い方がよく行う膣外射精という方法をとっていると1年間に10%以上の確率で妊娠することになってしまいます。特に排卵日近くでも膣外射精を行う人がいますが、これは非常に危険な方法です。射精前でも精子が少し漏れ出て妊娠することがあるからです。排卵日頃にはセックスしないか少なくとも最初から最後までコンドームをつけなければなりません。
 
ピル(低用量ピル)のすすめ
 若い方の話を聞いていると、排卵日のことをよく知らない方が多いですし、膣外で射精すれば妊娠しないと思っている方もたくさんいます。たくさんの女性が毎月のように妊娠していないかどうか不安を感じています。こうした若い女性には低用量ピルをお勧めします。毎日忘れずに薬をのみさえすれば簡単に確実に避妊ができます。
 
低用量ピルとは
 日本では、1999年に低用量ピルというホルモン量の少ない副作用のほとんどないピルが発売されました。日本の発売は世界と比べてかなり遅れましたが、世界では1億人以上の女性がピルを使っています。その安全性についても長い間調べられています。欧米では性教育の場で避妊法の筆頭にあげられるのがピルを使用することです。高校生でもコンドームよりピルを使っている女性の方が多い国がたくさんあります。
 
ピルをのむとどうして妊娠しないのか?
 ピルは主に3つの働きによって妊娠を防ぎます。そもそも卵巣からでるホルモンは頭の中の下垂体というところからでるホルモンによってコントロールされています。ピルをのむとピルに含まれるホルモンによって下垂体からでるホルモン量が減るので排卵が起こらなくなります。これが主な作用です。排卵とは卵子が入っている卵胞という袋がだんだん大きくなって破裂して卵子が卵巣の外にとびでることです。月経が規則的な人の場合は普通月経開始から14日目頃が排卵日です。飛び出た卵子が卵管の中に入っていって卵管の膨大部というところに卵子がきたときに精子がいれば受精が始まります。
 月経の1週間位前には子宮の内膜が厚くなって受精卵が子宮の中にのっかりやすい状態になっています。ピルをのむと子宮内膜が厚くならないので、たとえ排卵して受精しても受精卵が子宮の中で発育しにくくなります。月経とは妊娠の準備をするために厚くなった子宮内膜が、妊娠が起こらなかった場合にはがれ落ちることです。ピルをのんでも、薄いながらも子宮内膜は少しは厚くなるのでピルをのんだ後に子宮内膜がはがれるために月経が起こります。普通のピルは21日目までしかホルモンが入っていないのでこの時期をすぎると子宮内膜にホルモンが働かなくなるのではがれ落ちるのです。これは通常の月経が起こるメカニズムとほとんど同じ現象です。
 またピルをのむと子宮の入り口の粘液の性質が変わるため精子が子宮の中に入りにくくなります。
 
ピルの副作用
 日本の女性はピルというと副作用が心配という方がほとんどです。非常にまれに危険な副作用がでるというのは、40年以上前のホルモン量が多いピルを使っていた時代の話だと考えて下さい。現在の低用量ピルを使ってもほとんど副作用がありません。人によってはのみ始めの1カ月位の間、吐き気がしたり乳房がはったり、頭痛がしたりすることがありますがこれらの症状は自然になくなります。ピルをのんで体重が増えるとかニキビがでるとかいうのも低用量ピルが発売される前の話です。
 
ピルと乳ガン
 女性ホルモン剤をのみ続けると乳ガンになりやすくなるという話は非常にたくさんの人について統計学的に調べると事実です。欧米の人で調べたデータによると、10万人に34人の割合で起こる乳ガンがピルをのみ続けることによって42人になります。日本人は欧米と比べて乳ガンになる人が少ないのでピルの影響はもっと少ないのではないかと思われます。乳ガンに関しては心配なデータですが、ピルをのむことによって卵巣ガンや子宮体ガンが減るということも明らかな統計学的な事実です。
 
ピルをのんではいけない人
 年配の方で心臓が悪い方や非常にめずらしい血栓ができやすい病気の方、重い肝臓病の方などはピルを使ってはいけません。35歳以上の方でたばこをたくさん喫う方にもピルはあまりすすめられません。
 
ピルをお勧めする人
 若 い健康な女性で確実に避妊したい人にはピルをお勧めします。
その他、以下の方にもピルがお勧めです。 

1.

月経痛がひどい方:ピルをのむと月経痛が軽くなる人がたくさんいます。

2.

月経量が多いために貧血になる方:ピルをのむと月経量が少なくなります。

3.

ニキビがひどい方:ピルをのむとニキビが改善します。

4.

子宮内膜症の方:月経を止める治療をしていない期間にピルをのむと痛みの治療と同時に子宮内膜症の悪化予防になります。

5.

子宮筋腫がある方:手術をしないで様子をみる場合、ピルをのんでいると子宮筋腫の発育が遅くなります。

 
ピルののみ方
 ピルには21錠続けてのむタイプと28錠のむタイプがあります。
21錠タイプ
 1周期分が21錠あるタイプです。初回だけ月経の開始日からのみはじめます。1日1錠ずつ21日間のみ続け、その後7日間は休薬します。普通は21錠をのみ終わって数日後に月経がきます。早く来る人もいれば遅れてくる人もいます。月経がいつくるかに関わらず、7日間の休薬後次の薬をのみ始めます。その後は21日間のんでは7日間のまないということの繰り返しです。
28錠タイプ
 1周期分が28錠あるタイプです。初回だけ月経の開始日からのみはじめます。1日1錠ずつ28日間のみ続け、月経がいつからきても構わずに薬がなくなったら次の薬をのみます。実はこのタイプの最後の7日分の薬にはホルモンが入っていません。のみ忘れ防止のために7錠余分に入っているということですので、21錠タイプと実質的に同じものです。
 どのタイプのピルも1周期分が1シートになっています。錠剤は何種類かに色分けされていて、のむ順序も決まっています。忘れずに毎日一定の時刻にのむことが大切です。2日以上忘れると避妊効果がなくなることがあります。絶対にのみ忘れないようにしますが、1日忘れた位なら翌日に2錠のめば避妊効果はあります。
 月経の始まった最初の日曜日からのみ始めるという方法もあります。この方法だと新しいシートののみ始めは毎回日曜日になります。最初の日曜日が月経初日とかなりずれている場合は1周期目の避妊効果が不確実になるので、最初だけ他の避妊法を併用しなければなりません。
 
ピルの入手法
 産婦人科で買って下さい。他の科でも病院によってはピルを扱っているところもあります。ピルは市販されていません。
 
ピルの値段
 ピルは健康保険が使えないので全額自己負担になります。自費診療になるので病院によって値段が違い、1カ月分が3,000円のところもあれば4,000円のところもあります。また同じ1カ月分といっても診察費を含めて3,000円のところや診察費は別にかかるところもあります。当院は診察費を含めて1カ月分が2,900円です。
 
 ピルをのむと月経痛が軽くなりますし、月経不順で排卵日が定まらないためにいつが危険日かわからない人にとっては避妊と同時に月経不順の治療効果もあります。ピルをのんでいても将来妊娠しにくくなることもありません。ピルを上手に利用してみませんか?

 


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