低用量ピルに関する最近の話題
 ピルの新しい使用法と服用法

低用量ピルは安全で確実な避妊法です。わが国で低用量ピルが発売されてから7年以上が経過し、避妊以外の目的でピルが使われる機会が増えてきました。いわゆるピルの副効用を利用した使われ方ですが、最近では副効用というよりもはっきりとした効用として認識され始めています。今回は、ピルの避妊以外のメリットと新しい服用法(月経初日以外に服用開始する場合と2日以上飲み忘れた場合の対処法)について説明します。

A. 避妊以外の低用量ピルの効用

低用量ピルのメリット

月経痛が軽くなる。
子宮内膜症の症状が軽くなる。
月経量が少なくなる。
貧血が改善される。
ニキビが改善される。
長期服用すると卵巣ガン、子宮体ガン、良性乳房疾患が減る。

にきび(尋常性ざ瘡):にきびが軽減するという報告は多数あります。1,021名のにきびの女性が低用量ピル服用3ヵ月後には418名(〜127名)、6ヵ月後に186(〜81)名にまで減少したという大規模調査結果もあります(カッコ内はマーベロン服用の場合)。

低用量ピルを使った婦人科治療

月経困難症3ヵ月以上続けて服用することによって学校や仕事を休むほどの高度の月経痛がほぼなくなります。

過多月経:月経量が40%以上減少します。そのため、過多月経による貧血も改善します。

子宮内膜症:子宮内膜症による痛みが軽減します。子宮内膜症治療薬とほぼ同等の効果があると言われています。

子宮筋腫:子宮筋腫が原因で過多月経、貧血がある場合に使うと効果的です。低用量ピルの服用を続けることによって筋腫が小さくなる場合もあります(個人差あり)。

月経不順:カウフマン療法という月経不順の治療を低用量ピルによって行います。月経不順の治療としてピルを用いる場合、23ヵ月服用、12(〜3)ヵ月休止というサイクルを続けます。

排卵時痛、月経前症候群:ピル服用中は排卵しないので、排卵に関連した症状がなくなります。

B. ピルの服用法に関する新しい基準

服用開始日について 

 低用量ピルの添付文書には、「月経初日に服用開始すること」と記載されています。
WHOの基準(2002)によると、他の日から開始することもできます。

1. 月経開始後5日目以内なら低用量ピル服用を開始できる。この場合、他の避妊法の併用は不要。

2. 妊娠していないことが確実ならば他の日から開始してもよい。この場合、最初の7日間は他の避妊法を併用する。

1.は「3相性ピルを月経初日に服用開始した群と5日目に服用開始した群を比較した結果、両群とも排卵が起こらなかった」というデータに基づいています。2.は「低用量ピルを7日間服用すれば排卵が抑制された(7daysルール)」というデータによります。

飲み忘れ時の対処法

 添付文書には、「ピルを2日以上続けて飲み忘れたら避妊効果が期待できなくなるので服用を中止すること」と記載されています。WHOの基準(2004)によると、「実薬を12錠飲み忘れた場合、できるだけ早く実薬を1錠服用し、その後は1日に1錠を服用し続ける。他の避妊法の併用は不要」とされています。つまり、2日続けて飲み忘れても中止しなくてよいということです。

実薬を3錠以上飲み忘れた場合でも対処法はあります。ただし、少々複雑です。

1週目(シートの1列目)に3錠以上飲み忘れ、他の避妊を併用せずに性交を行った場合:避妊効果が期待できないので妊娠する可能性があります(心配なら緊急避妊ピルを服用)。

2週目に3錠以上飲み忘れた時:できるだけ早く実薬を1錠服用し、その後は1日に1錠を服用し続ける。実薬再開後の7日間はコンドームを併用するか性交を控える。

3週目に3錠以上飲み忘れた時:できるだけ早く実薬を1錠服用し、その後は1日に1錠を実薬の最後まで服用し続ける。次いで、休薬(偽薬服用)しないで次の新しいシートを開始する。

その他、当院での応用的服用法

 一般的な服用法以外に応用的な服用法が可能です。休薬期間は7日間で、それを超えてはいけません。しかし、休薬期間を短くしても避妊効果は保たれますので、一時的に意図的に休薬期間を短縮してもさほど問題ありません。

応用例1
 ピル服用にも慣れ、いつも決まった曜日に月経が来るようになったが、月経が来る曜日を変えたいと思った時:休薬用の偽薬を13日分のまずに新しいシートを開始すれば次周期は13日分早く月経が来ます。

応用例2
 ピル服用中に次の月経を遅らせたい時:21錠目まで服用した後に休薬せずに追加のピルを服用する。どんなピルを何日間ほど服用するかなどいろいろバリエーションがあります。たとえば、中用量ピルを数日〜1週間ほど追加服用して休薬すれば追加しただけ月経が遅れます。普段1相性のピルを服用している人なら新しいシートの一部を月経移動の追加用として利用できます。また、1相性、3相性などに関わらず、21錠後に全く休薬期間を入れずにすぐに新しいシートに移行するという方法もあります(次の月経はかなり遅れますが、月経までの間に不正出血が起きる可能性もあります)。

応用例3
 低用量ピルを緊急避妊ピルとして使う方法:3相性ピルの場合、成分含量が最も多い錠剤を性交後72時間以内に4錠服用し12時間後にさらに4錠服用する。

 服用法について、大事なのは何といっても飲み忘れをしないことです。説明書にはあまり詳しく書かれていませんが、飲み忘れに関して当院で最も強調しているのは、休薬期間をあけ過ぎないようにすることです。休薬期間をあけ過ぎると避妊効果が低下して妊娠してしまいます。たとえば、新しいシートを数日以上遅れて開始するとか、3列目の最後の23錠を服用しないままさらに7日間休薬するなどということがないように注意して下さい。

最後に

 低用量ピルに対する偏見や誤解は根強く残っていますが、近年、低用量ピルは女性の健康に寄与する生活改善薬としての働きがあることにより再び注目されてきています。また、高い安全性については、海外での服用率の高さと長い歴史が証明しています。今後は子宮内膜症や月経困難症の治療薬としても大いに期待されます。皮膚科に数年以上通院してもなかなか改善しなかったニキビが低用量ピル服用後数週間から数ヵ月で劇的に改善したというような皮膚科の先生方が認めたがらない厳然とした事実もありますが、一般には普及していません。日本では2%に満たないくらいの服用率ですが、諸外国では低くても10%以上、数10%を超える国が多くあります。低用量ピルは、服用していればほぼ確実に避妊でき、ほとんど予測した日に月経が来て、月経痛も軽く少なくなるという薬で、個人的にはサプリメントをのむような感覚で気軽に多くの女性に服用してもらってよい薬だと思いいます。

 


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